Munechika Lab.

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研究内容紹介

はじめに

世界経済のグローバル化や地球温暖化など,企業を取り巻く外部環境は絶えず変化しており,企業はこれらの外部環境の変化に迅速に対応しなければ,淘汰される時代に なってきている.
また,質のよい製品やサービスを提供するためには,製品・サービス自体の改善を行うことだけでなく,組織内にマネジメントシステムを構築し,組織 全体でPDCAサイクルを回し,製品・サービスの質を保証していくことが必要不可欠となる.

私達の研究室では,こういった時代の変化に対応できる,製品・サービスの質を保証していける組織の構築を目指して,研究を行っている.代表的な例で言うと,TQM(Total Quality Management)やISO9000などのフレーム ワークを利用したマネジメントシステム構築,従業員満足度評価,リスクマネジメント,不良低減手法等,企業における経営管理や組織活動に関する研究を行っている.

経営管理・改善

製造業の製造部門を中心に発展してきた品質管理の概念・方法論は,現在あらゆる産業のあらゆる部門において,広く用いられている.
私たちの研究室では,品質管理の概念・方法論により,さまざまな分野・領域における経営の管理・改善を推進する研究を行っている.その一例として,JISQ9005を活用した競争優位要因に基づく品質マネジメントシステムの自己評価とその再設計に関する研究や災害により経営資源に被害が発生した際に,復旧活動や代替生産により,製品・サービスの供給を継続または可能な限り短期間で再開できるよう事業継続計画(Business Continuity Plan)に関する研究を行っている.


競争優位要因に基づく品質マネジメントシステムの自己評価とその再設計

ある事業領域で競争に勝ち,好業績を得るためには,競争優位要因に基づく経営が有効である. これに基づいて自組織の品質マネジメントシステムを自己評価し,戦略的に再設計を行うことによって, 企業は持続的成長を達成することができる.

競争優位要因は,顧客のニーズ,競合状況,製品の特徴,必要な技術などの取り巻く経営環境と当該企業の経営方針や保有する特徴が複雑に絡み合って決定され, 個々の企業は必ずしも自らが強化すべき競争優位要因を抽出できるわけではない.その結果,競争優位要因に基づく自己評価にうまく結び付けられていないのが現状である.競争優位要因の抽出方法は,ビジネスプロセスの形態によって変わってくると思われる.

そこで本研究室では,B to B製造メーカに焦点を絞り,そこでどのように競争優位要因を抽出すればよいかを明らかにする.

【関連文献】
[1] 金子雅明,棟近雅彦,今井敏博,永井庸次(2003):“経営革新のための自己評価方法に関する研究”,「日本品質管理学会第71回研究発表要旨集」,pp.33-36
[2] 河口弘,棟近雅彦(2006):“経営改善・革新のための自己評価方法に関する研究”,「日本品質管理学会第36回年次大会研究発表要旨集」,pp.11-14
[3] 佐藤仁人,棟近雅彦,金子雅明(2006):“B to B製造メーカにおける組織能力像の作成方法に関する研究”,「日本品質管理学会第39回年次大会研究発表要旨集」,pp.47-50


設計・製造委託先の管理方法に関する研究

現在,企業はコスト削減や多様な顧客要求への対応が求められている.その対策のひとつに業務の委託がある.
しかし,その管理が不十分なために品質問題が起きている場合が少なくない. 本研究の共同研究先である社でも,現在多くの業務委託を行っており,委託先起因の品質トラブルの割合は全体の5割程度にまで拡大している.

そこで本研究室ではA社での事例をもとに,委託製品の品質を確保するため,委託先管理の方法を提案することを目的とする.


製造業における事業継続計画の策定方法に関する研究

企業は事業活動において様々なリスクにさらされている.リスクの顕在化により事業中断に陥れば,利益の損失だけでなく信用の失墜にもつながる.昨今では,委託先の取引条件としてリスク対策の構築状況について問われることも珍しくない.

そこで企業は,事業活動に大きな影響を与えるリスクの発生に備え,緊急時の安否確認や火災,薬液の漏洩などへの防災対策だけでなく,事業継続計画(以下,BCP ; Business Continuity Plan)を策定している.BCP とは,経営資源に被害が発生した際にも復旧活動や代替生産により,製品・サービスの供給を継続または可能な限り短期間で再開するための事前の対策や計画である.
企業はBCP を策定することで,被災時の影響を緩和し,事業活動を迅速に復旧することができる.BCP に関する従来研究にはその策定方法が示されているが,その内容は具体性に欠ける.そのため,製造業においてBCP を策定できるまでには至っていない.

そこで本研究室では,X社との共同研究により,製造業におけるBCP の策定方法を提案する.

【関連文献】
[1] 坂本卓也,棟近雅彦,本堀勲(2005):“製造業における事業継続計画の策定方法に関する研究”,「日本品質管理学会第35回年次大会研究発表要旨集」,pp.105-108

マーケティング・データ解析

近年の情報通信技術の急速な発達と低コスト化は,多くの企業にとって重要な,大量の経営データの蓄積を容易にしている.これらの経営データは,データマイニング等を行うことによって,顧客を把握し,購買傾向など有益な情報を発掘できる可能性があるが,多くの企業ではそういった情報を活用しきれていない.
そこで私たちの研究室では,クレジットカードの利用情報やデパートの販売情報などの情報を利用し,その活用方法や分析手法の研究を行っている.


クレジット利用情報を活用したキャッシング移行パターンの分析方法の提案

金融関連企業にとって,キャッシングは利益率が高く,大きな収益源となる.しかし,キャッシングに移行する顧客の行動パターンはわかっておらず,利用を促すための効果的なマーケティング活動が行えていない.

そこで,本研究では,企業が保有している顧客の個人情報やクレジット,キャッシング利用情報を用いて,利用者にアンケート調査を行い,キャッシング移行パターンの分析方法を提案した.


マーケティング活動に活用できる店外催事客の特徴把握に関する研究

多くの小売企業は通常,営業店での販売以外に,在庫処分や売上を目的とした店外催事を行っている.また,店外催事は,マーケティング活動の一環として,営業店への引き込み効果も期待して開催されている. しかし,店外催事をきっかけに営業店に行く顧客の特徴は把握できていないため,営業店への引き込みが,効果的に行えていない.

そこで,本研究ではM社を事例として,M社が保有する個人情報やショッピング販売情報を利用し,顧客にインタビュー調査を実施し,店外催事後も営業店を利用している顧客の特徴を把握した. そして,効果的なマーケティング活動を行うための方策を提案した.


市場品質情報データベースに関する研究

メーカが他社との競争で優位に立つためには,顧客要求を満たす製品を次々に開発する必要がある.このため,製品実現プロセスに十分な時間を確保できず,品質問題を引き起こしてしまうことがある. この状況で品質を保つため,品質データの早急な分析,有効な情報のフィードバックが求められる.

そこで,本研究では,修理や返品,問合せなどの一般市場からフィードバックされる品質情報(以下,市場品質情報)を保有するデータベース(以下,DB)が,この課題に対し有効に活用されていない原因を分析し,その対策を提案する. そして,市場品質情報DBのあり方,活用方法について考察した.

不良低減

組織の質を高めるためには,質マネジメントシステムを構築し,PDCAサイクルを回すことが重要であるが,そのためには,Check,Act段階において是正処置,再発防止策を実施し,継続的改善を行っていくことが必要となる.
私たちの研究室では,この未然防止策,再発防止策を効果的に実施できるよう,工程FMEA(Process Failure Mode and Effect Analysis)や根本原因分析(Root Cause Analysis)など,不良低減や未然防止のための手法や活動に関する研究を行っている.


工程設計における不具合の予測に関する研究

工程不具合の未然防止の手法として, Process Failure Mode and Effect Analysis(以下,工程FMEA)がよく利用されている.この手法についての文献は数多く存在するが,それらには実施手順の大枠しか述べられていない.
本研究では,文献の調査と不具合事例の解析を通じ,従来の工程FMEA の具体的な問題を抽出する.そして,これらを解決するための方法論を検討し,工程FMEA の手順を具体化する.

【関連文献】
[1] 梶原光徳,田村泰彦,棟近雅彦,金子雅明(2007):“工程の不具合予測・未然防止設計に関する研究”,「日本品質管理学会第37回年次大会研究発表要旨集」,p.173-p.175


原子力安全における不適合事象の要因分類に関する研究

地球温暖化対策などで,発電事業における原子力発電の重要性が増してきている.しかし,1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故や1999年の東海村JCO原子力臨界事故が有名であるように,放射能漏れ事故が発生した場合の人的・環境的被害は甚大である.そのため,安全性の確保は最優先課題である.

安全確保のためには,再発防止や未然防止の取り組みが非常に重要となるが,その有効な手段として,根本原因分析(Root Cause Analysis 以下,RCA)がある. 本研究では,原子力発電所における不適合事象の分析を通じ,RCAをより効果的に実施できるよう,背後要因の分類方法を検討する.

【関連文献】
[1] 根本拓也,棟近雅彦,渡邊邦道,大石茂(2009):“原子力安全における不適合事象の要因分類に関する研究”,「日本品質管理学会第39回年次大会研究発表要旨集」,p.179-p.182


精密製品における不良低減手法に関する研究

AV 機器,光学機器など精密製品は,常に高機能化,小型化,精密化が求められている.精密製品における製造工程のロットサイズは大きいので,わずかな不良率でも大量の不良品が発生する.精密製品のような付加価値の高い製品の大量不良は,その損失も大きい.よって,精密製品の不良低減は重要な経営課題となっている. しかし,扱っている製品を構成する技術が高度化し,製造工程で導入する設備も複雑化している中では,不良低減を効果的に行うことが難しいのが現状である.

そこで本研究では,精密製品を製造しているA工場とB工場での不良低減活動をもとに,効果的な不良低減手順を確立することを目的とする.

顧客満足・従業員満足

顧客満足は,顧客が製品やサービスの購買・使用などの体験を通じて形成される個人の心情的評価としてとらえられており,企業間の競争に勝つためには,その把握・向上が必要不可欠である.また,一般的に,従業員満足度の向上は,生産性や顧客満足度の向上につながるといわれており,経営品質向上のために従業員満足度の向上が重要視されてきている.  
そこで私たちの研究室では,企業間取引における顧客満足度調査,分析,対策立案方法や従業員満足度調査,分析,改善方法に関する研究を行っている.


企業間取引における顧客満足度調査に関する研究

企業間の競争に勝つためには,顧客満足度(以下,CS)調査を行い,満足度向上のために必要な施策を実施する必要がある.従来のCS 調査に関する研究は,企業が最終消費者を対象とした調査に関するものが多く,企業間取引の特徴を考慮したCS 調査の方法は提案されていない.
本研究では,A 社におけるCS 調査活動の改善を事例として,企業間取引におけるCS 調査を効率的に実施,分析をして,満足度向上のための施策を明らかにするための具体的な方法論を提案することを目的とする.

【関連文献】
[1] 平林裕樹,棟近雅彦(2004):“企業間取引における顧客満足度調査に関する研究”,「日本品質管理学会第34回研究発表要旨集」,pp.47-50


従業員満足度の向上方法に関する研究

近年,経営品質向上のために従業員満足度の向上が重要視されてきている.従業員満足度向上のための取り組みの一環として,満足度調査やモラルサーベイといった質問紙調査が行われている.しかし,それらは全体の傾向を把握するにとどまり,具体的施策への結びつきが十分に考慮されているとはいえない.
そこで本研究では,従来の満足度調査方法を見直し,従業員の満足の構造を明らかにすることで,より具体的な改善施策へ結びつく方法を検討する.そして,それらを考慮した満足度調査方法を提案する.

【関連文献】
[1] 小沢勉,棟近雅彦(2000):“従業員満足度向上に関する研究”,「日本品質管理学会第30回年次大会研究発表要旨集」,pp.145-148
[2] 亀田賢司,棟近雅彦(2005):“従業員満足度向上方法に関する研究”,「日本品質管理学会第35回研究発表要旨集」,pp.117-120


顧客満足度向上支援のための魅力的品質・当り前品質の識別方法に関する研究

多くの企業では,顧客満足度(以下,CS)の重要性が広く認識され,CS向上のための調査(以下,CS調査)を行っている.しかし,その結果を今後のCS向上活動の方針策定に十分活かせていない.CS向上活動の方針策定には,製品品質を構成する個々の機能(以下,品質要素)において,満足の獲得,不満の解消のどちらを行うことが効果的であるかを判断する必要がある.
そのための考え方として,狩野ら[1]の提案した魅力的品質・当り前品質がある.本研究では,CS調査の結果を活用して,品質要素を魅力的品質・当り前品質に識別する方法を提案することを目的とする.

【関連文献】
[1] 狩野紀昭ら(1984):“魅力的品質と当たり前品質”,品質,14,[2],39-48

環境

温暖化や大気汚染などが急速に進み,世界中で規制の強化が進んでいる.もはや企業にとって,環境問題は他人事の話ではなく,経営戦略において,重要な位置を占める課題となっている.
そこで私たちの研究室では,製品の循環という観点から,製品が顧客やその他の環境に与える影響を考慮した製品の設計手法および評価手法や環境保全活動への消費者の参画という観点から,消費者との有用なコミュニケーション方法に関する研究を行っている.


部品のリユースを考慮した製品設計に関する研究

近年,地球環境に対する関心が高まっており,環境を考慮した製品設計が必要になってきている.その手段の一つとして,部品の再使用(以下,リユース)が挙げられるが,リユースを考慮した製品設計が行われている場合はまだ少ない.それは,設計段階でリユースを検討するために,どの情報をどう活用すべきかが明確になっていないことに起因している.
本研究では,事例として自動販売機を取り上げて分析を行う.そして,現存する製品に関連する情報の中からリユースするために必要な情報を整理し,リユース検討のための手法を提案することを目的とする.


汎用的なライフサイクルシミュレーターの開発に関する研究

近年,環境意識の高まりにより,製品のライフサイクル(以下,LC)を考慮した設計戦略の実現が必要とされている.LC戦略を考える際には,ライフサイクルシミュレータ(以下,LCS)を用いることが有効である.しかし,本学科の共同プロジェクトで開発されたLCSでは,様々なライフサイクルオプション(以下,LCOP)を取り入れるために個別の仕様変更が必要である.
本研究では,自動販売機(以下,自販機)メーカーであるS社を調査した結果をもとに,汎用性の高いシミュレータの構造を提案することを目的とする.