医療における地域災害レジリエンスマネジメントシステムモデルの開発


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社会への貢献

目標の設定

 本プロジェクトは、JST(独立行政法人科学技術振興機構)、RISTEX(社会技術研究開発センター)に設置された研究開発領域「コミュニティがつなぐ安全安心な都市・地域の創造」(領域総括:林 春男 京都大学防災研究所教授)の中のひとつの研究プロジェクトとして実施します。この研究開発領域の目標は(A)(B)(C)の3つです。

    (A)防災・減災に関わる既存の研究開発、現場における取組や施策、制度などの現状を科学的に整理・分析し、同時に起こりうるさまざまな危機・災害を一元的に体系化し、効果的な対応を図るために必要な新しい知見の創出および方法論の開発を行う。

    (B)危機・災害対応に関わる都市・地域の現状と問題を把握・分析し、安全・安心に関わる知識・技術、社会制度、各般の関与者(行政、住民、学校、産業、NPO/NGOなど)を効果的に連携させることにより、安全な都市・地域を構築するとともに人々に安心を提供するため、現場に立脚した政策提言、対策の実証を行う。

    (C) 研究開発活動および得られた研究開発の成果が、当該地域・研究領域の枠を超えて活用され、普及・定着するよう、情報共有・意見交換や連携・協働のための関与者間のネットワークを構築する。

 これらの研究開発領域の3つの目標をふまえた本研究の最終目的は、医療の地域レジリエンスを向上できる真のマネジメントシステムモデルを構築することです。そのためには、以下のアウトカムが不可欠と考えており、本研究での達成を目指しています。

    ●地域レジリエンスの定義、考え方の構築
    ●レジリエンスの評価モデル、特に最終パフォーマンスを考慮した評価指標の構築
    ●ADRMS-Hモデルの構築

 また、アウトカムとしては医療の地域レジリエンスの向上であり、それが評価指標により明確に示されることです。本研究では研究の対象である 川口市に限定されたアウトカムになりますが、それがADRMS-Hというマネジメントシステムで実現できることが検証できれば、さまざまな地域での地域レジリエンスを高めること可能性を見出すことになります。
 そして、安全・安心な社会を実現できることにつながり、これは大きなインパクトになると考えられます。また、地域レジリエンス評価モデルによって各地域でのレジリエンスの測定が可能となり 、その改善を促すことにつながり、これも大きなインパクトになります。

 以上のような本プロジェクトの成果は、研究開発領域の目標(B)に直接的に貢献します。すなわちADRMS-Hを構築する過程において、危機・災害対応に係る都市・地域の現状と問題を把握・分析することになります。また、 ADRMS-Hによって、安全・安心に関わる知識・技術,社会制度、関係者を効果的に連携させることになり、安全な都市・地域を構築することが可能になります。さらに本研究では、ADRMS-Hの効果の検証も行うので、地域の住民に安心を提供するため、 現場に根ざした対策の実証を行うことになります。
 このように本研究が目指すのは、上記目標(B)そのものになります。さらに研究開発領域の上記目標(A)、目標(C)にも貢献できます。防災・減災に関わるこれまでの取り組みとしてはBCP、BCMSの策定があげられていますが、その現状を科学的に整理・分析を行い、ADRMS-Hという新しい方法論を開発することが本研究の目的であり、目標(A)が目指すものと合致すると考えます。
そして、本研究の成果が、自治体および医療関連施設が広く活用できるADRMS-Hモデルであり汎用性の高いものとして活用できることで、目標(C)が目指すものと合致します。このモデルは自治体のネットワークや医学関連学会、病院会などで共有し、普及、定着を図っていく予定です。


研究フィールドの設定

 ADRMS-Hに対する社会のニーズはいうまでもありません。ADRMS-Hは都市・地域でも必要なものであり、地域の安全・安心な社会を形成する上で不可欠なシステムだといえます。地域の住民の方々は皆、自然災害の被害にあう可能性があり、その意味で本研究の成果は社会一般に広く還元できるものだといえます。
 本研究では、 川口市 および 川口市立医療センター を中心にADRMS-Hを構築していきます。これは、自治体と自治体立病院の連携が基盤となっています。自治体と医療機関の連携形態としては、この組合せがもっとも見受けられるパターンと考えられ、これを対象とすることでADRMS-Hの全国展開を促進することが期待できます。
 さらに川口市は特例市に指定されており、人口は58万人で特例市の中では人口は第1位、人口密度は第3位です。同市での構築例は多くの 特例市にとっても参考になるはずです。
自治体立病院がない場合でも二次医療圏に原則1カ所は災害拠点病院が指定されているので、その病院と自治体との連携に展開が可能だと考えます。
自治体とその地域における 基幹災害拠点病院が、 地域の災害対応のためにADRMS -Hを構築した例はなく、その先駆的な例をつくることは、全国への波及効果が大きいと考えます。さらに、このADRMS-Hは複数の組織から構成されるものであり、そのようなマネジメントシステムの例はあまり例を見ません。


モデルの社会的応用

 東日本大震災の記憶は、国民からはまだ消えておらず、現在も日本各地で地震をはじめ自然災害が頻発している現段階で、安全・安心な社会の実現に向けてひとつの方向性を示すことは、社会的なインパクトも大きいと考えられます。
 また、地域レジリエンスの評価モデルは医療、また単一組織、地域にかかわらず適用できると考えます。評価指標自体は、業種や地域に応じて新たに導出する要素があることは予想できますが、最終パフォーマンスとADRMS-H要素との関係に着目して評価する考え方は、汎用性が高いものです。したがって、本研究開発領域における他のプロジェクトにおいても広く活用できると考えられます。
 本研究では、ADRMS-Hというマネジメントシステムの構築を目標としており、マネジメントシステムの意義のひとつは継続性です。つまり、持続できる活動にすることも目標になります。
 川口市立医療センターは、質の向上を目的とするQMS (※用語解説参照)を既に導入しています。QMSは日常的に運用するものですが、ADRMS-Hは災害時のものという意識が働くので、関係者のモチベーションを維持するのに困難が伴います。
 本研究では、その点に対してQMSとADRMS-Hを組み合わせた統合マネジメントシステムを構築することを目指しています。マネジメントシステム監査やマネジメントレビュー等を通じて、関係者のモチベーションを維持することが可能となります。

用語解説

    QMS(Quality Management System):

    品質マネジメントシステム(QMS)は、QMSの国際規格であるISO9000では、「品質に関して組織を指揮し、管理するためのマネジメントシステム」と定義されている。品質のよい製品・サービスを提供するための仕組み、仕事のやり方のこと。組織的に製品・サービスを提供するには必ず必要となるマネジメントシステムである。


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